飲食店や美容サロンを探すように、インターネットで医療機関を検索する時代。病院やクリニックも、提供する治療や検査、設備の充実、患者への思いなどさまざまな情報発信の場として、ホームページなどのウェブサイトを活用しているかと思います。そこで忘れてはならないのが、医療広告ガイドライン。ガイドラインに反したウェブサイトを取り締まる目的で、厚生労働省は医療機関ネットパトロールを強化しており、不適切な医療情報をインターネットに掲載してしまうと行政指導が入ることも。何より患者に不利益を与えることになりかねません。そこで本コラムでは、医療広告ガイドラインでおさえておきたいポイントを、全10回にわたって解説していきます。
第1回は医療広告を取り巻く背景とガイドラインの概要をお届けします。
美容医療のトラブル多発を背景に、医療広告の法規制が厳格化
多くの人が、病院やクリニック探しにインターネットの情報を参考にしています。ドクターズ・ファイル編集部が2020年7月に実施した調査(※)では、「医療機関を探すためにインターネットを活用する」と回答した割合はなんと100%でした。気になる症状や治療方法、治療費、健康法など、医療・ヘルスケアのさまざまな情報を、インターネットで得ようとしている人も多く、そのニーズに応えるように、各メディアは医療をテーマにした記事を次々と配信しています。
一方で、主に美容医療サービスを受けた消費者からトラブルの報告が相次ぎました。また、心ないメディアにおける記事のねつ造によって、インターネット上の医療・ヘルスケア情報の信ぴょう性が疑われるようになりました。そうしたことを背景に、2018年6月に「医療広告ガイドライン」が大幅に改訂。以下の主な変更点が、病院・クリニックの運営に大きな影響を与えたかと思います。
つまり、病院・クリニックのホームページをはじめとする「医療機関のウェブサイト」も、広告規制の対象となったのです。ホームページ以外にも、さまざまなウェブメディアが「医療機関のウェブサイト」に該当します。こちらは次回、詳しく解説します。
ウェブサイトのほかには、次のような媒体が「広告」に該当する具体例として挙げられます。
厳しくもあり、許容範囲が広いともいえる医療広告ガイドライン
医療広告ガイドラインとは、厚生労働省が医療法に基づいて策定した「医療機関に関する広告掲載上のルール」です。正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」といいます。
では、条文の冒頭にある一文をご覧ください。
「広告しても良いよ」と言ったこと以外は、どんな方法でも、誰であっても、広告してはいけない!ということで、いかに厳しいルールかがわかるかと思います。ただし、広告して良いことを一つ一つ個別に定めるのではなく、「○○に関する事項」のように一定の性質を持った項目群としてまとめて規定することで、幅広い事項の広告が認められています。
医療は人の生命や健康に関わるサービスであり、虚偽広告や誇大広告によって受け手が不適当なサービスを受けた際の被害は計り知れません。一方で、患者が自分に合った医療機関や治療を知るためには、広告による正確かつ詳しい情報が必要だという考えに基づき、厳格だけれど幅を持たせたルールとなっているのです。
医療広告ガイドラインを守らないと、一体どうなるのか?
ガイドラインを違反したからといって、即刻、罰則を受けるというわけではありません。一般的に次のような流れで対処をするとされています。
なお、罰則を受ける対象者は、「法人自体又は当該広告違反の主導的な立場にあった者」とされています。「主導的に」とは、「主に誰の強い意思で違反広告が掲載されたか」というところでしょう。具体的には、医療機関の開設者・管理者、違反広告を手がけた広告代理店や出版社、放送局などメディア運営側の代表者が挙げられます。
今回は、インターネットにおける医療情報の扱いが厳しくなった背景と、広告ガイドラインの概要についてご説明しました。
次回は、「どこまでが医療機関のウェブサイトにあたる?」「ウェブサイトの監視事業で5000件以上の違反が確認!?」など、より踏み込んだテーマについて解説します。
※ドクターズ・ファイル編集部による「患者のクリニック選びに関する調査」。対象は、全国主要都市に住む、もしくは勤務する20~59歳の男女4000人。2020年7月にインターネット調査にて実施。
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