9割が導入済みだが「使いこなせない」の声も。ドクターに聞いた電子カルテのメリット・デメリット

今や一般的になりつつある電子カルテ。従来は紙に記入していた診療記録を電子データとして一括して管理する電子カルテは、業務効率の向上やスムーズな情報共有につながることから、多くの医療機関が導入しています。

とはいえ、「電子カルテ」と一口にいっても特徴はさまざま。「導入したものの、使いこなせない」「思っていたよりも費用がかかる」など、現状に満足していなかったり、悩みを抱えていたりするドクターもいるようです。

そこで本稿では、ドクターズ・ファイル編集部が医科・歯科のクリニックを対象に実施した「電子カルテの利用状況についての調査」(※)の結果をもとに、クリニックで電子カルテを利用する上でのメリット、デメリットをひもといていきます。


※ドクターズ・ファイル編集部による「電子カルテの利用状況についての調査」。対象は、ドクターズ・ファイルをご契約中の全国の医科・歯科クリニック305院。2020年7月27日~8月2日にインターネット調査にて実施。 


「オンプレミス型」と「クラウド型」、それぞれにメリット、デメリットがある

調査に参加したドクターのうち実に9割以上が電子カルテを導入していることがわかります。調査結果を医科歯科別に見ると、医科では90.2%、歯科では94.8%が電子カルテやレセプトコンピューター(レセコン)を「導入している」と回答し、導入率の高さがうかがえます。

ちなみに、厚生労働省が平成29年度に実施した調査では、一般診療所(医科)の電子カルテ導入率は41.6%でした。ドクターズ・ファイル利用者を対象にした本調査では、一般的な水準よりも高い導入率となっているようです。

電子カルテを導入する際、多くのドクターが悩むのがどのタイプにするかということ。大きく分けて、電子カルテにはオンプレミス型とクラウド型の2種類があり、両者はデータを管理するサーバーの置き場所が異なります

オンプレミス型は院内に設置された専用のサーバーに、クラウド型はサービスを提供する業者が持つ外部のサーバーに、それぞれデータが保存・管理される仕組みになっています。

オンプレミス型は院内のみで運用するためセキュリティーレベルが比較的高い点や、自院の状況に合わせてカルテをカスタマイズできる点が強み。ただしデータの保管に必要なランニングコスト(初期費用)が高くなりやすいことに加え、メンテナンスなどのサポートは手厚いものの、メーカー担当者とのやりとりが発生するなどやや手間がかかります。

一方、クラウド型の大きなメリットはランニングコストがあまり発生しないこと。また、システムのバージョンアップやデータのバックアップが自動で行われるため負担が少ない点、さらにはインターネットを介して外部にあるデータを閲覧する特性上、データが院外に保管されているため災害に強い点なども強みといえます。ただしカルテをカスタマイズしづらいため、規定の範囲内での運用が求められます。

このように両者ともメリットとデメリットがあり、どちらかが優れているというわけではありません。 


「オンプレミス型」が一歩リードする一方で、わからずに使用している人も 

これらを踏まえた上でアンケート結果を見ていくと、電子カルテを「導入している」と回答したドクターのうち、40.2%がオンプレミス型、12.8%がクラウド型を使用しているという結果に。

オンプレミス型は電子カルテが普及し始めた頃から使われており、長年同じ種類の電子カルテを使用し続けているドクターが多いことが、この結果につながっているのかもしれません。

一方のクラウド型は、医療分野のクラウド解禁に伴い2010年以降に普及してきたサービスです。それまでは医療情報をインターネット上で扱うことは難しいと考えられてきましたが、セキュリティー面の向上やガイドラインの整備に伴い、選択肢の一つとなりました。

数字だけ見るとオンプレミス型に軍配が上がった形ですが、注目したいのが、何を使っているか「わからない」と回答した人が全体の半数弱を占めている点です。それぞれの電子カルテの特徴を理解し、自院に合ったものを選択しているドクターは意外に少ないのかもしれません


導入の決め手は、サポートの手厚さと使いやすさ。安心して使えることが重要  

現在国内では、多種多様な電子カルテシステムが販売されており、商品によって特色や長所はさまざまです。そうした中で、ドクターたちはどんな視点で選んでいるのでしょうか。

結果はご覧のとおり、メーカーによるサポートの手厚さが重視されていることがわかります。使用開始前の「導入サポート」以上に、トラブル対応やシステムの改修といったメンテナンスを行う「保守サポート」が重視されていることから、導入後のスムーズな運用を考慮しているドクターが多いようです。

そしてそれに続くのが、「操作性のわかりやすさ」。パソコン操作に苦手意識のあるドクターはもちろん、看護師などのスタッフも使うものですから、誰にとっても簡単に操作できることが重視されるのは当然といえるでしょう。

また、導入のタイミングではコストや体制づくりなどの負荷がかかるために、提供するメーカー担当者との信頼関係も欠かせません。「営業担当者の人柄」が上位に入っているのは、その表れといえます。

一方で、「イニシャルコスト」「ランニングコスト」は5、6位という結果に。導入にはある程度費用がかかっても仕方ないと考えている人が多いのかもしれません。


実際に使い始めると、コストやカスタマイズ性を重視するドクターが多数  

いざ電子カルテを導入したものの、他の製品への乗り換えを検討するドクターも少なくないようです。そこで「乗り換えを検討した理由」を尋ねたところ、最も多かったのは「ランニングコストが高い」という回答でした。興味深いのは、導入時には優先順位としてそこまで高くなかったコスト面が重視されていることです。

続いて多かった「カスタマイズ性が低い」という理由も、同じく導入時の決め手にはなりづらいものでした。ですが、いざ使い始めてみると自院の診療スタイルに合わせて「項目を追加したい」「画面を見やすくしたい」といった要望が出てくるもの。4位の「セキュリティーが不十分」という声に関しても同様で、実際に使用してみたからこそ、わかることだといえます。


診療に欠かせないものだからこそ、理解を深めて導入・活用を

今回のアンケートではすでに9割以上のクリニックが電子カルテを導入しているという結果が出ていますが、医療現場のIT化を推進する一環として厚生労働省も電子カルテの普及を推進しています。今後も新規開業の医療機関を中心に、導入するドクターが増えていくのではないでしょうか。

一方で、あえて電子カルテを導入せず、従来の紙カルテを使用しているクリニックもあるでしょう。その理由としては「紙カルテなら災害時にも使える」「入力するより書くほうが早い」など、紙カルテのメリットを重視していることが挙げられます。また「診療中、先生がパソコンの画面ばかり見ていて、冷たい印象を受ける」といった患者の声に耳を傾け、電子化をデメリットと捉える人もいるようです。

電子カルテと紙カルテ、どちらが優れているということではありませんが、あるクリニックでは、電子カルテの単語登録機能を活用して、診察中のカルテへの入力時間を減らしているそうです。工夫次第では、今後電子カルテの強みをより一層生かすことができるのではないでしょうか。

せっかく電子カルテを導入するのであれば、納得して選び、有効活用したいもの。そのためには、活用法を含めて情報を集め、理解を深めることが大切といえます。ぜひ、今回のアンケート結果を、リサーチする上でのヒントにしてみてください。(ドクターズ・ファイル編集部)  

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