かかりつけ医を持っているのは2人に1人?〈前編〉患者調査で浮き彫りになった、医療機関へのかかり方

先進諸外国では、「ホームドクター」という概念が浸透しており、「かかりつけ医」を持つことはごく当たり前のこととされています。日本でも、大規模病院へ患者が集中することを防ぎ、健全な医療体制を維持するため、国や医師会はかかりつけ医を持つことを推奨しています。

そして昨今のコロナ禍により、気軽に自身や家族の健康について相談できるかかりつけ医の存在を意識する人も増えており、その概念は今後もさらに注目されていくことが予想されます。

そこで、ドクターズ・ファイル編集部では、家族の健康を一番把握している子育て中の女性を対象に、かかりつけ医に関する意識調査(※)を実施。その結果から、患者のかかりつけ医へのニーズの在り方を読み解いていきます。


予想以上に少なかった! 「かかりつけ医がいる」と答えた人は約半数 

まず、全国の子育て中の女性に「自分自身にかかりつけ医はいるか」という調査をした結果から見ていきましょう。「かかりつけ医がいる」と答えたのは全体の約半数でした。「いない」と回答した人のほうがやや多いことは意外にも感じます。

「いる」と回答した人でも、その人数については、1人につき平均1.51人。さらに、最も多かったのが「1人」(59.3%)という回答で、診療科や利用目的に応じてかかりつけ医を複数持つ人の割合は、40.7%にとどまります。思っていた以上に「かかりつけ医を持つ」ということに対しての意識の低さが浮き彫りになりました。

ではなぜ、こうした状況になっているのか。さまざまな角度から行ったアンケートの回答から、その理由を探っていきましょう。 

診療科目としては、「内科」のクリニック・病院にかかりつけ医を持つ人が圧倒的多数でした。言い換えれば、内科以外のかかりつけ医を持っている人は、思っていた以上に「少数派」だということになります。婦人科や歯科、皮膚科などは、アンケートの調査対象が女性だということもあり、もう少し高い数字が出るかと予想していたのですが、いずれも2割以下という結果でした。

この数字を読み解くと、「風邪をひいたり、少し調子が悪いと感じたりしたときに、気軽に通えるクリニックがある」というくらいの人が、実は多数を占めているということなのかもしれません。つまり、自身の健康状態に不安を感じる場面がまだ少ない、ということも推察されます。

一方、複数のかかりつけ医を持っている人は、どんな意識を持っているのでしょうか。


まだ出会えていないだけで、潜在的には多くの人がかかりつけ医を求めている!? 

やはり「診療科ごとにかかりつけ医を持っておきたい」という理由が、大多数を占める結果となりました。それぞれに気になる症状や疾患、あるいは不安を感じていることなどが違うため、複数のかかりつけ医を持つ人の多くは、「内科のドクター」+「それ以外の診療科のドクター」という組み合わせであると推測できます。

同じ診療科で複数のかかりつけ医を持っている人の場合は、「治療内容などに合わせて」という人が一番多く、次いで「診療時間や曜日によって」、そして「自宅近くと職場近くとで使い分ける」という理由が続きます。子育てに仕事にと忙しいワーキングママなどは、自宅近辺以外でも必要なときにすぐ相談できるクリニックの存在を知っておきたいというニーズがありそうです。

ではなぜ、現在は「かかりつけ医がいない」と答える人が、これほどまでに多いのでしょうか。 

おそらくは、いま現在は自身の健康状態に不安を感じる場面も少なく、実際にドクターに診てもらう機会も少ない人たちが、現実的に「必要としていない」と回答していると推察されます。つまり、「クリニックや病院にかかる=病気やけがの治療のため」と、シンプルに考えている人が多く、予防の観点からクリニックを利用するという意識を持たない人が多いということ。

こうした人たちの多くは、病気や疾患が発症してから慌てて良いクリニックを探すということの繰り返しで、結果としてベストなドクターに出会えていないという可能性もあります。そのため、回答の1位と2位はクロスしている部分もあるのではないかと考えられます。

ただ、4位の「どのように選べばよいかわからない」という人も含め、「まだ出会えていない」という回答からは、潜在的にかかりつけ医を求めているということもうかがえ、そうした人が自分に合ったドクターと出会えるように、情報提供や啓発は今後より必要とされるだろうと感じます。


家族の健康を守るためには、まず母親自身の健康への意識向上を促すことがカギ 

自分自身については「いない」という人が約半数だったのに対し、子どもについては、8割以上の人が「いる」と回答。かなり高い割合を示しています。特に自身自身に「かかりつけ医がいる」という人のうち、「子どもにもいる」と答えた人は、94.7%にも上ります。

逆に自身に「かかりつけ医がいない」人の場合は、「子どもにかかりつけ医がいる」という人の割合は59.0%にとどまり、健康意識は自分自身の健康への関心度と相関しているといえます。まず自分自身に「かかりつけ医がいて良かった」「安心できた」と思える経験があればこそ、自分の家族にも、その存在の必要性を強く感じるのかもしれません。 

やはり「小児科」との回答が圧倒的に多く、定期健診や予防接種の相談など、小児科のドクターの存在は、子育て中の母親にとっては、自身のかかりつけ医以上に重要だといえます。

小児歯科や矯正歯科についても、虫歯予防や歯列矯正は、タイミング的にも、大人のそれよりも重要だと捉えている人が多いようです。自分自身のことよりも子どもの健康を優先する、母親の愛情を強く感じる結果であるとも見て取れますが、家族の健康は、本来ならば母親自身の健康管理が万全であってこそ。そのため、より一層、健診や予防の観点から、母親自身の意識向上を促す必要があるといえるでしょう。


【前編まとめ】 

かかりつけ医の必要性を漠然と感じていながらも、日々の忙しさの中では、「子ども>自分自身」という優先順位で、自身の健康管理は後回しになっている人が多いようです。それに加えて、かかりつけ医を持つことの良さや安心感を自分自身が経験していなければ、子どもや家族への健康意識もやや低くなりがちという実態も見えてきました。では、かかりつけ医がいて良かったと思う場面とは、一体どんなときなのでしょうか。

後編では、より具体的に、患者がかかりつけ医に求めていることを探っていきたいと思います。

※ドクターズ・ファイル編集部による「かかりつけ医に関する調査」。対象は、日本全国の、0歳〜15歳までの子どもを持つ、25〜55歳の女性400人(東日本200人・西日本200人)。2020年5月にインターネット調査にて実施 

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