ウィズコロナの現在。こんなときだからこそ、いつも以上に頑張ってくれているスタッフたちの労をねぎらい、スタッフのためになることを何かしてあげたい、頼もしいスタッフに長く働いてもらいたい――そう考えつつも、これまで行っていた食事会などが行えず、悩んでいるドクターは少なくないようです。しかし、そうした想いを「福利厚生」として取り入れ、コロナ禍でも独自の工夫をしているクリニックが数多くあります。
そこで本稿では、クリニックが取り入れている手厚い福利厚生や、ユニークな福利厚生をシリーズで紹介します。
第4回は、スタッフを笑顔にする取り組みに力を入れている、むらおか歯科・矯正歯科クリニック理事長の小林英範先生に話を聞きました。
すべては「スマイルファースト」のために。笑顔が増えれば定着率につながる
第1回で紹介したように、法定外福利厚生は8つに分類されています。
その中の、「リフレッシュのための取り組み」と「日頃の労をねぎらうための取り組み」に力を注いでいるのが、千葉県市川市にあるむらおか歯科・矯正歯科クリニック。落ち着いた住宅街にある同クリニックは、1980年に開業した地域密着型の歯科医院です。2018年にリニューアルオープンし、現在のスタッフ数は約25人。ほとんどが女性で、20代から60代までと年齢層が幅広いのに加え、長く働く人が多く、10年以上勤務する人も多くいるそうです。
そんな同クリニックの理念は「スマイルファースト」。患者を笑顔で迎えるだけではなく、スタッフ自身が常に笑顔でいることを大切にしようという意味が込められています。福利厚生についても、「スマイルファースト」が基盤となっているのだとか。では、小林先生が実践する「スタッフを笑顔にする福利厚生」とは、どのようなものなのでしょうか。
目にも楽しいおしゃれなユニフォームで、気分UP!
同クリニックの扉を開けるとぱっと目に飛び込んでくるのが、スタッフたちのおしゃれで個性的なユニフォーム。写真に写っているものはブルーのシャツですが、取材時は、ラベンダー色の生地にキャラクターがプリントされたキュートなユニフォームをスタッフ全員が着ており、とても華やいだ雰囲気でした。
同クリニックでは、ユニフォームを3ヵ月に1度変えており、1シーズンに2種類を日替わりで着用しているとのこと。小林先生が理事長に就任した2018年から取り入れているそうですが、その理由について、次のように答えてくれました。
「スクラブなどのメディカルウェアだと威圧感があって、クリニックの雰囲気が硬くなってしまうのが嫌だったんです。それに、女性の多い職場だし、好きなものを着ていると、テンションも上がるでしょう? 当初は、ファストファッションを使用していたこともありました。一人で着ると普通の服だけれど、みんなで着てしまえばユニフォームになるわけです。汚れたり古くなったりしたら気軽に買い替えられて、常に衛生的ですしね。今は、ファストファッションに限らず、スタッフたちに着たいものを選んでもらっています」
確かに、おしゃれなものを身に着けて働けば、気分も上がるというもの。女性心をうまく捉えたユニークな福利厚生です。また、「スタッフ自身が着たいものを選ぶ」というのも、スタッフが笑顔でいられるポイントといえるでしょう。
充実したランチを楽しんでほしいから、毎日お弁当を支給
ランチには毎日お弁当を支給しているのも、「スマイルファースト」のための福利厚生の一つ。1人1000円以内で、近所の精肉店のお弁当や蕎麦屋の出前、チェーン店のデリバリーと、メニューはバラエティー豊か。スタッフが好きなものを選んで、各自注文しています。1000円以内となるとお弁当の内容もかなり充実してくるので、スタッフにも好評のようです。
実は、この「お弁当の支給」が今のスタイルになるまでには、試行錯誤を重ねてきたと小林先生は言います。
「もともとは、毎日のお弁当支給は行っておらず、土曜日だけ僕がコンビニで全員分のお弁当を買ってきていました。でも、手間も時間もかかる上に、スタッフルームでは“レンジでチン渋滞”が始まるわけです。そこで、1人600円以内で各自デリバリーを利用し始めました。でも、しばらくすると、『なんだか、いつもみんな同じものを食べているなあ。自分だったら嫌だな』と思い、今年から1000円以内に金額をアップしたんです」
ただ導入して終わりではなく、スタッフの立場になって、本当にスタッフのためになっているのかを思い巡らす。もしなっていないと思ったら、別の方法を試してみる。小林先生のそんな真摯な姿勢こそが、スタッフの笑顔につながっているのかもしれません。
週休2.5日制を採用。特別休暇も多く設けて、オンオフのめりはりをつける
スタッフに集中してしっかり働いてもらうためには、きちんと「休む」ことが欠かせませんが、同クリニックでは、週休2.5日制を採用。同クリニックに入職して2年という歯科衛生士は、「週1日は午前が休みで午後から出勤しています。次の日が朝遅くていいと思うと気が楽ですね。忙しいですが、有休も取りやすい環境です」と話します。
誕生日月の好きな平日に1日取得できる「誕生日休暇」を設けるほか、最近では、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種のための「ワクチン休暇」を新たに設けるなど、時勢にも合わせながら、特別休暇を多く取り入れています。スタッフにしっかり休んでリフレッシュしてもらうことで、オンオフのめりはりをつけた働き方を実現しているようです。
コロナ禍でもできることを。スタッフの意見は柔軟に取り入れ、裁量を与える
コロナ禍前は、ビンゴ大会を開催したり、みんなでテーマパークへ遊びに行ったりするなど、イベントを多く行っていたという同クリニック。また、1人暮らしのスタッフも多いため、食べ物に困らないようにと毎週のように食事に行っていたそうです。しかし、それらができなくなった今、スタッフたちとコミュニケーションを図るため、日頃の労をねぎらうために、取り組んでいることがあるといいます。
「月1回、午後の診療を休みにして勉強会を開き、その合間にケーキとコーヒーを振る舞っています。また普段から、なるべくスタッフ全員と一言でも多く会話するように心がけてもいますね」
これまでのようなコミュニケーションを図ることが難しくなり、新たな入職者などなかなか素顔が見えないメンバーもいる中で、できるだけスタッフたちが笑顔でいられる環境づくりに力を注ぐ小林先生。そのために、日頃からスタッフがやりたいと希望したことは柔軟に取り入れ、ある程度スタッフたちの裁量に任せることも大切にしているそうです。
「クリニックの雰囲気づくりの中心にいるのはスタッフたち。彼女たち個々の力がうまくかみ合っていなければ、クリニックはいい雰囲気になりません。だからこそ、スタッフがストレスなく働けるように、ああいう器具が欲しい、こういう勉強会に参加したい、といった希望はできるだけかなえるようにしていますね。それから、うちは、新たなスタッフの採用面接もスタッフが担当しているんです。ベテランと若手の2人が面接官となっています」
実際に一緒に働くスタッフたちが心地良く働けるような人材を採用したい、という小林先生のスタッフへの心遣いが感じられるエピソードです。こうした細かな取り組みの一つ一つが、「スマイルファースト」につながっているといえそうです。
スタッフたちが心からの笑顔で働いていると、患者も笑顔になるはず。そんな好循環を生む福利厚生、参考にしてみてはいかがでしょうか。
(ドクターズ・ファイル編集部)
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