どの方法が最適?早わかりパターン別「診療予約システム」ガイド〈後編〉ネット予約入門講座

前編の調査で、患者に着実に浸透してきていることがわかったネット予約。時間や場所を問わず気軽に予約できるのが患者にとっての大きなメリットであり、医療機関を選ぶ際にネット予約の有無を重視する人も一定数いました。

一方、クリニックにとっても以下のようなメリットが挙げられます。

(1)受付や待合室の密集を回避できて、感染リスクを減らせる
(2)待ち時間の短縮によって、患者の満足度向上を図ることができる
(3)予約の取りやすさから、患者の再受診率を高められる
(4)レセプトコンピューターや電子カルテと連動できるシステムであれば、患者情報の一元管理が可能に。窓口業務の効率化につながる
(5)電話応対、予約枠の調整、キャンセルの処理など、受付スタッフの対応時間を減らせる。また、システム化することで人的ミスの軽減も

最近は、初診は電話予約で再診はネット予約、また、通常の診療はネット予約だが特定の診療メニューは電話予約というように、電話予約とネット予約を併用している医療機関も増えています。

また、「診療予約システム」そのものについてふれると、大きく分けて「順番予約制」と「時間予約制」の2つがあり、さらに、

「保険診療は順番予約制、自由診療は時間予約制」

「一般診療は順番予約制、予防接種や検診は時間予約制」

「内科は順番予約制、小児科は時間予約制」(複数の診療科目のある医院の場合)

といった“複合型の運用”も珍しくないようです。


このように、時代や患者のニーズの変化、クリニックの診療スタイルに合わせて、さまざまな形にアレンジされている予約方法。しかし、それゆえに自院に合う予約システムがわからないというクリニックも。

そこで後編では、ネット予約以外のものも含めた「診療予約システム」全般について、解説していきます。どのようなものがあるのか、主なメリット・デメリットも挙げながら具体的に見ていきましょう。


診察時間が一定で、患者数の多い診療科に適した「順番予約制」  

■順番予約制とは?

「事前に診療の予約枠を確保する」のではなく、「当日に診療の順番を予約する」という考え方。1日の患者数が多く、一人ひとりの診察時間が一定で比較的短い診療科目に向いていると考えられます。大きく分けると、窓口に診察券を提出したり、受付票に記入したりする「来院による受付順番制」と、「電話やインターネットによる順番取り制」の2パターンがあります。 

・来院による受付順番制(記入式・整理番号発券式など)

当日に受けつけた患者から順番に診察を行うシンプルな方法。患者が来院順に受付票に記名したり、発券された整理番号を受け取ったりするのが一般的です。電話もインターネット(パソコンやスマホ)も不要なので、特に高齢の患者層が多いクリニックでは、昔から変わらないスタイルとして喜ばれる傾向にあります。

【メリット】

急な体調不良の際や、たまたまスケジュールが空いた場合など、患者は事前予約なしで受診できる。シンプルな仕組みのため、スタッフ側の運用も簡単。

【デメリット】

来院者が集中すると患者一人ひとりの待ち時間が長くなってしまう。訪れる患者が重なり、待ち時間が長くなると、クレームに発展し、受付スタッフの負担増加につながることも。


・電話やインターネットでの受付予約による順番制

「来院による受付順番制」と異なる点は、受付の方法。窓口で直接受付を行うのではなく、インターネットの受付システムを使う、あるいはクリニックに電話をすることで、あらかじめ診察の順番取りを行います。

【メリット】

自宅や外出先から順番予約ができるので、来院後の院内待ち時間が短くて済む。また、ネット受付システムにメール機能がある場合は、「あと○番で順番が来ます」というお知らせが来るので、患者は適切な来院タイミングをつかみやすい。

【デメリット】

受付スタッフの受電やシステム入力といった業務が増える。特に電話の場合、通常の受付業務と並行して対応するため、「電話に出られない」「通常の受付業務が止まってしまう」といったロスやミスにつながるリスクも。 


待ち時間が発生しにくく、診療負荷の分散も可能な「時間予約制」 

■時間予約制とは?

予約患者のみを受け入れる「完全予約制」と、予約患者を優先的に診るという「時間予約制」の2つに分かれます。定期的な診察の場合、受診時に次回の予約をするケースも多いです。診療内容やクリニックのスタイルによっては「完全予約制」を採用することもありますが、多くの場合は当日予約や飛び込みの患者も受け入れる「時間予約制」を採用しているようです。患者の年齢層が高めで、一人ひとりの診察時間が比較的長く一定ではない診療科目に向いていると考えられます。 

・完全予約制

じっくりとカウンセリングを行いたい、集中して密度の高い治療を行いたい、といった診療方針をかなえるため、事前予約をした患者のみ受け入れる方法。

【メリット】

患者一人ひとりの診療枠が決まっているので、待ち時間がほとんど発生しない。待合室に患者が集中することもないため、院内感染のリスク減にも。

【デメリット】

当日の飛び込み患者を受け入れないことは、1日に診る患者の上限を決めることになるため、予約患者の遅刻や無断キャンセル・当日キャンセルはクリニックにとってのリスクになり得る。


・時間予約制

予約患者を優先的に診るという前提で、来院時間の予約を受けつける方法。特定の時間に患者が集中しがちな診療科目に向いているといえそうです。

【メリット】

「9時に1人、9時30分に1人」というように患者の来院時間を調整することで、スタッフにかかる診療の負荷をある程度分散させられる。また、一人ひとりの患者にしっかりと時間を取ることができるため、診療の質の向上にもつながる。

【デメリット】

余裕を持って予約枠を確保しておかないと、前の時間帯の診療が次の時間帯に食い込んでしまい、待ち時間が発生。長く待たされた患者から、「何のための予約なの?」とクレームを受ける可能性も。


医院・患者双方のニーズに沿った多様な予約システムが登場 

「患者のために」という理由だけでなく、円滑で効率的なクリニック運営のためにも活用されている予約システム。前述した「順番予約制」「時間予約制」のほかにも、「時間帯予約制」など多彩なスタイルがあります。


・時間帯予約制

時間予約制とは違い、患者が希望の「時間帯」を選ぶことができる方法。患者は「9:00から9:30の中の1人」という大きな枠の「時間帯」で予約し、その時間帯に患者が来院したら、順番待ちの最前列へ優先して案内するというもの。患者の来院タイミングを分散できるため、コロナ禍において、感染対策として導入するクリニックが増えているようです。

【メリット】

ある程度、時間の幅があることで患者は来院しやすく、診療時間の目安も立てやすいため、「時間どおりに来たのに」というクレームになりにくい。

デメリット

もともと患者数の多いクリニックなどの場合、診療が予定どおりに進まず、患者の待ち時間が増えてしまうことがある。


・初診電話予約制

初診に限り、予約時間を決める前に電話で症状をヒアリングし、その上で予約に進んでもらうという方法。中には、電話問い合わせの段階で医療ソーシャルワーカーやカウンセラーが相談内容を聞くことも。心療内科や婦人科などのクリニックで導入されていることが多いといいます。

【メリット】

電話でやりとりすることで、患者の様子を細かく感じ取れるとともに、会話によるコミュニケーションによって、予約キャンセル率軽減にもつながる。

【デメリット】

仕事や家事育児などで忙しく、「手っ取り早く予約したい」という患者にとっては、煩わしく感じる可能性も。


・SNSによるオンライン予約

QRコードをスマホで読み取り、クリニックのアカウントを「友だち登録」する、もしくは予約システムの登録時、メールアドレスの代わりに患者のSNSのIDを登録するといった、SNSによるオンライン予約。

【メリット】

総務省「令和元年通信利用動向調査」によると、令和元年にSNSを利用している個人の割合は69.0%と年々増加しており、SNSに慣れた患者にとっては予約のハードルが低い。また、クリニックは自院のお知らせなど情報発信ツールにも使える。予約のリマインドなどもできるため、キャンセル率の低減にも。

【デメリット】

特に高齢者など、便利な情報機器やサービスがあっても活用できない人が「置いてきぼり」になってしまう。


【後編まとめ】

今回はさまざまな予約システムを紹介しましたが、クリニックの診療スタイルや患者数、患者の特徴などによって最適な方法は異なるため、「この予約システムがいい」と一概にはいえないもの。クリニックによっては、「現状、待ち時間が長くないので、予算をかける必要はない」「現在の診察の流れでうまくいっている」など、現状満足により予約システムの導入を考えていないという声も珍しくありません。

また、一度は導入したものの、システムが実際の診療フローとマッチしなかったり、予約時間どおりに患者が来ないことによるリスクやトラブルが起こったりした結果、予約制そのものをなくしたという意見があるのも事実です。

患者にとってベストなドクターが一人ひとり異なるように、「最適な予約システム」はクリニックの数だけあるのかもしれません。ぜひ自院にふさわしい予約システムを探ってみてはいかがでしょうか。(ドクターズ・ファイル編集部) 

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