コロナ禍で興味を抱くドクターが急増中?クリニックの「キャッシュレス化」実態調査

現金いらずで会計がスムーズ、そうした理由などから注目を集めているキャッシュレス決済。主要各国のキャッシュレス決済比率は、40~60%となっており、今、世界規模でキャッシュレス化が進んでいます。一方、日本全体での普及率は20%台といわれ、医療機関に限ってみても、まだまだ浸透しているとは言い難い状況のよう。2019年に発表された厚生労働省の調査結果(※1)によれば、医療機関のキャッシュレス決済導入率はクレジットカードで16.5%、電子マネー(Suicaなど)で1.9%、QRコード決済(PayPayなど)で0.2%といずれも低水準となっています。

しかし、そんな中、経済産業省は国内のキャッシュレス決済比率を2025年の大阪・関西万博までに40%、将来的に世界最高水準の80%まで引き上げる施策を打ち出しました。医療のITC化を推進する日本医師会ORCA管理機構でもまた、手数料の割安な決済端末を提供するなど、着実にキャッシュレス化の波が押し寄せています。そして、くしくもその追い風となったのが、コロナ禍。接触機会の低減のため、総合病院、大学病院などではすでに普及が加速しており、他院の動向が気になるドクターも増えているようです。

そこで、ドクターズ・ファイル編集部では、全国の医科・歯科クリニックを対象に「キャッシュレス決済に関する調査」(※2)を実施。本稿ではそのデータをもとに、医療機関におけるキャッシュレス化の実態をひもといていきます。


5割以上がキャッシュレス導入へ。コロナ禍を背景に高まるニーズ  

まずキャッシュレス決済の導入状況を見てみると、実に半数を超えるクリニックが「導入している」と回答。前出の2019年時の厚生労働省による調査結果を踏まえると、ここ2年ほどで急速に普及が進んでいることがわかります。これは、院内感染防止の重要性が叫ばれる中、感染症対策の一環として導入するクリニックが増えたことが一因でしょう。

また、「導入している」の回答率を医科・歯科で比較すると、医科45.87%、歯科68.79%と、後者の導入率が1.5倍ほど高いというデータも。歯科においては、治療時の飛沫などによるエアロゾル感染の危険性がメディアに多く取り上げられたこともあり、口腔外バキュームなどの衛生管理設備とともにキャッシュレス決済を採用するケースが増加したのかもしれません。


クレジットカードが圧倒的多数。QRコード・電子マネーも大きく伸張  

次に、キャッシュレス決済を「導入している」と回答のあったクリニックが、どの決済方法に対応しているのかを見ていきます。

圧倒的に多かったのは、日本でも比較的馴染みのあるクレジットカード決済。QRコード決済や電子マネー決済についても、クレジットカードには及ばないものの、厚生労働省の調査結果と比較すれば大きく比率を伸ばしています。近年のキャッシュレス化の進展を考慮し、せっかくならすべての種類を導入してしまいたい、と考えるクリニックが多かったのかもしれません。

また、2019年10月の消費税率改正に合わせて政府が行った「キャッシュレス・消費者還元事業」によって、純粋にキャッシュレス決済の利用者が増えたことも、導入を後押しした要因と推測されます。 


日本は「キャッシュレス化」過渡期。利用者側の反応はいまだ鈍い状況 

では、実際にクリニックを訪れる人たちは、どれくらいキャッシュレス決済を利用しているのでしょうか。

クリニックでの1ヵ月の売上に占める、キャッシュレス決済の割合を見てみると、一番多かったのが「10%未満」という回答。この大きな理由に、手数料が影響していると考えられます。保険診療のような少額決済においても手数料が取られてしまうのは、医療機関にとっては痛手。そのため、飲食店などに比べると、保険診療が中心の医療機関ではキャッシュレス決済の導入が進んでいないといわれています。

また、医科と歯科で比較すると、キャッシュレス決済の比率が40%以上と回答した歯科クリニックが医科のおよそ2.5倍という結果も。あくまで医科と比較した場合ですが、自由診療によって費用が高額となりやすい歯科では、キャッシュレス決済への利用者側のニーズは高いといえるのではないでしょうか。


未導入でも60%以上が関心あり。一方、デメリットへの不安も散見  

ここからは、キャッシュレス決済を「導入していない」と回答のあったクリニックにも目を向けていきます。今後の導入予定について聞くと、およそ60%以上が「予定している」または「未定だが興味がある」と回答しており、非常に多くのクリニックが関心を寄せていることがわかりました。

一方で、導入しないと決めているクリニックも30%以上を占めています。その理由として圧倒的に多かったのは「手数料が高い」。特に保険診療がメインというクリニックや、地域に根差した比較的小規模な医療施設となると、手数料が集患に見合うとは限らず、どうしても手が出しにくい側面があるようです。

一般的にクレジットカードの手数料率は3%程度というイメージがある中、実は医療機関の料率については1%台と低く設定されたサービスが増えています。しかし、まだまだ「手数料が高い」というイメージは根強いといえそうです。

その他には、「受付業務が煩雑になる」という声も。決済手段が複数となることで売上管理が複雑になり、医療事務スタッフの残業が増えてしまう、といったことも懸念されているようです。また、患者からの要望がないことから「必要性を感じない」という回答も。高齢患者が比較的多いクリニックなどでは、そもそもクレジットカードを持っていない、もしくは暗証番号を覚えることが難しいという患者も多く、導入するメリットを感じづらいケースもあるでしょう。


思わぬ損失を招かぬよう、導入には運営状況を踏まえた総合的な判断が必要  

消費者の利便性、そして事業者の生産性を向上させるためのキャッシュレス決済は、新型コロナウイルスの登場によって、「感染症対策」という新たな付加価値を得ました。今回の調査で見られたキャッシュレス化への関心の高まりは、いまだ収束の見えないコロナ禍の中で、当分衰えることはないでしょう。確かに諸外国と比べれば導入率こそ低いですが、発想を変えれば、普及が遅れている今だからこそ他院との差別化が図れる一手となり得るのかもしれません。

その一方で、決済手数料や初期費用の高さなどにデメリットを感じているクリニックが多いのも事実です。手数料は損失につながり得ますし、キャッシュレス化によって新規患者の獲得に乗り出す必要がないというクリニックもあるでしょう。診療施設の規模や患者層、保険診療・自由診療の割合、さらには患者のニーズ。こうした要素をトータルに判断し、本当に導入が必要か検討していくことが大切でしょう。(ドクターズ・ファイル編集部) 


※1 厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果報告書」

※2 ドクターズ・ファイル編集部による「キャッシュレス決済に関する調査」。対象は、ドクターズ・ファイルを契約中の全国の医科・歯科クリニック415院。2021年6月にインターネット調査にて実施。 

患者ニーズ研究所 ONLINE|ドクターズ・ファイル

総合医療情報サイト『ドクターズ・ファイル』の編集部がより良い医院経営にお役立ていただけるよう、全国のドクター向けに医療コラムをお届けいたします。