スタッフに接遇研修を受講させる前に、院長がするべきこととは?《役に立つ!コミュニケーションのコツ》

スタッフ教育の一環として、多くのクリニックが「接遇」をテーマとしたセミナーを取り入れています。講師をクリニックに招いて独自のセミナーを実施する手もありますが、接遇の基本を学ぶなら公開型のセミナーを利用してもいいでしょう。今回の患者ニーズ研究所ではそれぞれのメリット・デメリットを整理するとともに、スタッフ、そして院長自身の接遇についてもどのタイミングで磨けばいいのかを、実例を交えてお届けいたします。


公開型セミナーと講師派遣型セミナーのメリット・デメリット

以下に、公開型セミナーと講師派遣型セミナーそれぞれのメリット・デメリットをまとめました。ご覧のとおり、特徴は真逆。一長一短といえます。

まず、公開型のセミナーにおける最大のメリットは手軽さです。1名から申し込めるため、勤務シフトへの影響も、かかる費用も最小限で済みます。原則として他院スタッフも一緒に受けるため細かい要望を聞いてもらえませんが、相談に乗ってくれることもあり、基本の「キ」を学ぶ場としては最適といっていいでしょう。ただし、基本以上の内容を学ぶコース設定はないことが多いので、学びっ放しになるのがもったいないところです。

その点、講師派遣型セミナーは研修内容の相談に応じてくれるのがうれしい点です。講師を招いての研修を定例化し、1年目は基本、2年目は電話応対、3年目はクレーム応対など、毎回テーマを変えながら柔軟に運営することもできます。

大まかな傾向としては、スタッフ数が少なければ公開型セミナーを利用するクリニックが多いようです。スタッフが入職するたびに公開型セミナーを受講するようルール化しておけば、接遇レベルを一定に保つことができます。一方、スタッフが多いクリニックであれば講師派遣型セミナーを検討するのが妥当でしょう。研修会社にもよりますが、人数が多ければ1名当たりのコストが低くて済むからです。

あるいは、双方のいいとこ取りをするという手もあります。全スタッフが公開型セミナーで基本を学び終えたら講師派遣型セミナーに切り替える、ハイブリッド型研修も有効でしょう。


スタッフのコミュニケーションも「接遇の一環」

研修を導入する際、多くのクリニックで残念な現象が見られることがあります。その一つが、医師の受講が漏れてしまうこと。以下は、ある歯科医院での実例です。

この様子を見た講師は、「院長は接遇研修を受講されましたか? もしまだなら、スタッフに対する態度も接遇の一環として、まずご自身を見直してみてはどうでしょうか。院長が近くに来るとスタッフが萎縮し、感じの良い応対ができなくなっているように見えます」と伝えました。院長は驚いて、「そんなことはないと思う。でもそこまで言うなら私も接遇研修を受けてきます」と決断。以下は、接遇研修を受講した後の院長のコメントです。

「接遇研修はちょっとショックな体験で、自分の接遇について講師から改善点をいくつも指摘されました。患者応対のロールプレイ演習を行った後は、初対面の若い他院のスタッフからも、『話せばいい先生だとわかるけど、第一印象が怖いです』『うちの院長は目を見てしゃべってくれるので、先生もそうすればいいのに』などのストレートなコメントをもらいました。まさか自分のせいでスタッフが委縮して、その雰囲気が患者さんに伝わっているとは思わなかったのです」

その後、院長はスタッフに対し、アイコンタクトを取る、気さくに話しかけるなどの努力をするようになったといいます。院長が自分の態度を改める姿を見て、スタッフの態度も徐々に和らいだのは言うまでもありません。

院長の接遇やコミュニケーションに対して遠慮なく指摘してくれる人は少ない、あるいは、いないのが一般的です。そう考えれば、医師こそ接遇研修を受けるメリットがあるのかもしれません。


講師を招いて研修を開催するときも、院長は必ず参加するのがベター

上記の事例は公開型セミナーに関するものですが、続いて講師派遣型セミナーの例も紹介しましょう。多くの場合、講師派遣型セミナーは要望によってカスタマイズが可能で、講義形式も、椅子に座って皆で受けるスタイルの研修ばかりではありません。

その一つが、患者応対の現場での研修です。接客業なら覆面調査員が潜入して接遇レベルを評価することも可能ですが、クリニックではそうもいきません。それに代わる方法として、講師がスタッフに1人ずつ付き添って接遇面の長所・改善点を個別評価し、診療後に本人に直接フィードバックする研修手法があります。ある歯科医院では、患者アンケートで接遇の評価が低迷したのを機に、この研修を導入することにしました。初回指導時、院長は講師に、「私は結構ですからスタッフだけお願いします」とオーダーしました。

プロの講師が定期的に訪問して個別アドバイスを受ければ、スタッフの接遇はある程度高まります。接遇のプロの話し方や立ち振る舞いを間近で見ることも良い刺激となり、数ヵ月後、スタッフの接遇評価は上昇に転じました。

ただし、問題が1点。患者アンケートで、「スタッフは優しいのに先生は事務的だった」など、院長とスタッフを比較するニュアンスのコメントが出てくるようになりました。スタッフの接遇が底上げされた結果、院長の接遇だけが取り残され、目立って悪く見えるようになったのです。これに危機感を感じた院長は、「やはり私もお願いします」と毎回指導を受けるようになり、しばらくして院長の接遇に対するバッドコメントは減少。同時に、スタッフは「私たちだけ研修を受けさせられる」という“やらされ感”を抱くことなく、前向きな気持ちで研修に臨むようになりました。

この2つの事例に共通して言えるのは、院長が自分自身を変える必要性を痛感し、即行動に移したことです。クリニックの雰囲気を良くするも悪くするも院長次第。患者の受診満足度が高い、患者に選ばれる医療機関づくりのためには、学ぶ機会を積極的につくるだけでなく、院長自ら率先してともに学ぶ姿勢を見せることが大切といえるでしょう。


【接遇セミナーについて】

クリニックの接遇セミナーについては、下記サイトなどでもご紹介しています。

船井総研コーポレートリレーションズ


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