〈前編〉医療従事者への転職意識調査からひもとく!ミスマッチを防ぐ求人・採用のヒント

患者に気持ち良くクリニックに通ってもらうためには、看護師や受付、歯科衛生士といったスタッフたちの協力が欠かせません。しかし、せっかく入職した有望なスタッフがすぐに辞めてしまった……という話がよく聞かれます。仕事の専門性の高さや大変さも相まってか、実は医療業界の離職率は高い傾向にあり、転職サイクルの早さも業界ならではといえます。スタッフの離職が頻発してしまう状況は、日々の診療にも悪影響を及ぼすだけでなく、採用コストが増大し、クリニック経営そのものにも直結するため、改善をめざしているドクターも多いのではないでしょうか。

そこでドクターズ・ファイル編集部では、転職経験者や転職を考えたことのある医療従事者たちを対象に、転職に関するアンケート調査を実施しました。転職を決断したきっかけや勤務先を選ぶ際に重視するポイントなどの傾向をもとに、前後編の2回にわたり、ミスマッチを防ぐための求人・採用でのヒントを紹介します。

前編では、入職してすぐに辞めてしまう、いわゆる「早期退職」が起こりやすい原因を調査結果から検証。求人や面接での対策を探っていきます。


〈ヒント1〉7割以上が入職後にギャップを実感! 防ぐには求人・面接時に丁寧な説明を

そもそも仕事内容や労働条件に納得した上で入職しているはずなのに、なぜすぐに辞めるような人が出てきてしまうのでしょうか。その原因を知るために、まずは就業前後のギャップについて見ていきましょう。

これまで働いていた医療機関で、就業前のイメージと就業後の現実との間にギャップを感じたことが「ある」と答えた人は、実に75%近くに上ることがわかりました。つまり4人のうち3人のスタッフが、「こんなはずではなかった……」という違和感を抱えながら働いた経験があることになります。

それでは、どういった点にギャップを感じたのでしょうか。次の質問で、ギャップを感じたことのある人に、さらに「入職前に知っておけば良かったと思うポイント」について尋ねました。

給与や福利厚生、勤務時間、休日・休暇など、条件面に関する内容が具体的なギャップの上位に挙がっています。また2位に「スタッフ同士の人間関係」や6位に「スタッフに関する情報」が挙がっていることから、同僚との人間関係が入職前に思い描いていたものと異なると感じた人も少なくないようです。

このギャップと転職との因果関係を探るため、次に、実際に転職を考えるに至った理由を見ていきます。 

4割近い人が感じているのが、労働時間や給与への不満です。前の質問の「事前に知っておけば良かったと思うポイント」で上位に挙がった内容との重複が見られることから、入職後に感じた「ギャップ」が、転職に至るほどの「不満」にまで発展してしまう……、という流れが生じていることが想像できます。


ここまで、3つの調査結果を紹介しました。労働条件へのギャップを感じる人が多いという結果について、「労働条件は求人や面接で開示しており、応募者は納得した上で入職しているはずなのになぜ?」と疑問を抱くかもしれません。この理由としては、労働条件を擦り合わせる段階で、説明をしたと思っても、応募者はしっかりと理解できていなかった可能性も考えられます。

求人募集や面接では、常に労働条件を細かく丁寧に伝え、応募者がきちんと理解できているのかを確認しないといけません。応募者の認識不足を防げれば、働き始めてからギャップを感じてしまうケースは減らせると思われます。

同様に、転職理由の3位「業務内容への不満」に関しても、求人や面接の段階で応募者の業務内容への理解や納得感を見極めることが、ミスマッチを防ぐ上で大切かもしれません。


〈ヒント2〉応募者は知りたい情報を得られていない!? 伝えづらい情報こそ積極的に開示しよう 

それでは応募者は求人の検討段階で、どの程度、求人内容を理解しているのでしょうか。そこにもまた、ミスマッチが起きる原因がありそうです。ここからは「自分の希望に合う転職先を見つけたい」と考える求職者たちが、勤務先を選ぶ際に特にチェックする内容を探っていきます。

まず、条件面でチェックする内容では、8割以上の人が挙げている「給与額・給与条件」を筆頭に、「勤務時間」や「休日・休暇」が上位に。これらは、〈ヒント1〉の項目で紹介した「入職後にギャップを感じたポイント」や「転職の理由となった不満点」でも同じように上位にランクインしている項目です。

続いて、「条件面以外」についても聞きました。特にチェックする内容として注目したいのが、1位「スタッフ同士の人間関係」や3位「スタッフに関する情報」です。こちらも、入職後に感じたギャップの上位に挙がった内容と一致しています。


2つの調査結果は、〈ヒント1〉の項目で紹介した入職後のギャップとほぼ同じでした。つまり、応募者は求人の検討段階で知りたい情報を読み込んでいたにもかかわらず、実際に働き始めるとギャップを生じてしまう可能性が高いということ。求人や選考を通じて、応募者が本当に知りたい情報を十分に得られていないケースがあるようです。

「給与条件や残業時間を伝えすぎると応募が減ってしまうのでは」と危惧するドクターも中にはいるかもしれません。しかし、これらは応募者が特に知りたいポイントだと認識して積極的に情報開示するほうが、長い目で見ればミスマッチを防いで早期退職者の減少にもつながるとも考えられます。


【前編まとめ】求職者の労働条件への理解を促し、ミスマッチや早期退職の軽減につなげて  

前編では、求人や面接での条件提示をよりきめ細かく行うことや、応募者との条件に関する認識の擦り合わせを丁寧に行うことで、応募者にしっかり理解や納得してもらうことの大切さをお伝えしました。

もし、採用したスタッフが定着しないことにお悩みであれば、求人や面談での労働条件の伝え方に不十分な点がないか、そして応募者の認識不足が生じていないか、いま一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

次回の後編では、今も続くコロナ禍が求職者に与えている影響を検証し、求人や採用へのヒントを紹介します。(ドクターズ・ファイル編集部)


※ドクターズ・ファイル編集部による「転職に関する調査」。対象は、転職経験のある、または転職経験はないが転職を考えたことのある医療従事者(医師・歯科医師を除く)で、全国主要都市の25歳〜59歳の男女700人。2022年3月17日~22日にインターネット調査にて実施 

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