〈後編〉医療従事者への転職意識調査からひもとく!ミスマッチを防ぐ求人・採用のヒント

ドクターズ・ファイル編集部では、医療従事者への転職に関する意識調査を実施(※)。前編では、労働条件における採用側と応募者側での認識の食い違いにより、入職後に「思っていた内容と違う」というギャップが生まれ、それが不満へと発展することで早期退職に至りやすいという結果を伝えました。この状況を防ぐためには、募集条件や働く環境に関する情報を積極的に伝え、応募者の認識不足を避けることが重要な鍵となります。

今回の後編では、医療現場の状況を大きく変えた新型コロナウイルス感染症の流行が、医療従事者の働き方への意識にも変化をもたらしたと推察し、求職事情にどのような影響を与えているのかを検証。コロナ禍での求人や採用のヒントを探ります。


〈ヒント3〉コロナ禍で仕事観に変化が。感染対策に関連づけた説明で求職ニーズに応えよう

新型コロナウイルス感染症が広まってから2年以上が経過し、この間に医療現場では感染者やワクチン接種への対応と、それに伴う診療体制の変更、感染症の対策に追われ、スタッフたちも刻々と変わる環境に適応することが求められました。こうした職場環境の変化は、医療従事者の求職事情にどう影響しているのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症拡大の前と後で、働く上で重視するポイントに変化があったかどうかを聞いたところ、「ある」と答えた人は32%に上りました。約3人に1人の医療従事者が、以前とは異なるポイントを重視するようになったということになります。そこで、次の質問では新たに重視するようになった内容について、「変化がある」と回答した人に尋ねてみました。

半数近くの人が挙げてトップになったのが、「勤務地(通いやすさ)」でした。通いやすさは気になる条件として常に上位に挙がる傾向にありますが、コロナ禍では公共交通機関などの利用で生じる三密の環境をできるだけ避けたいという思いから、さらに意識が高まっていると推測できます。第2位の「新型コロナウイルス感染対策」は言わずもがなですが、他にも「給与額・給与条件」「福利厚生」「休日・休暇」といった条件面が上位にランクインしており、感染症に最前線で向き合っているという医療業界特有の事情が、感染対策や労働条件への意識を一層高めているのかもしれません。


上記2つの調査結果からは、多くの人たちの考え方にコロナ禍の影響が深く及んでいることが読み取れます。そのため転職活動でも、求人で見つけた医療機関が感染対策や感染症を踏まえた条件面を気にする人は増えていると思われます。求人募集をする際には、スタッフへの自院の感染症への取り組みについてもしっかりと伝えることが、求職者の応募意欲を高める鍵となりそうです。

もし特別な対策を実施していなくても、もともと備わっている勤務先としての強みや魅力を、「コロナ禍でも働きやすいポイント」として求人でアピールすることで、求職者に十分に訴求できます。例えば、これまで求人で、

・「従業員用の駐車場や駐輪場がある」と伝えていた場合は、「従業員用の駐車場や駐輪場があるので、三密を避けた通勤が可能

・「予約制なので患者が集中しない」と伝えていた場合は、「予約制で患者が集中しないので、感染リスクを抑えられている

・「休日・休暇が取りやすいシフト体制」といった伝え方をしていた場合、「休日・休暇が取りやすいシフト体制を敷いているので、感染症を理由とした欠勤などにも対応できる

などのように表記をすると、求職者が気にしている感染対策に関する情報を伝えることができるのです。求職者にコロナ禍での安心材料としてクリニックの強みを伝えていくことで、信頼感や安心感が高まり、応募につながることも期待できます。

コロナ禍でも安心して通えるように、患者への情報発信を強化しているドクターは多いでしょう。同様に、求職者が安心して働けるための情報発信も意識してみてください。


〈ヒント4〉求職者が抱える感染症へのさまざまな不安感。ドクターの寄り添う姿勢を伝えて

次に、医療従事者のコロナ禍での本音を掘り下げるために、「コロナ禍に働く上で不安に感じること」について質問し、思いの丈を引き出せるように自由回答形式で答えてもらいました。 

寄せられた回答を見てみると、大きく「感染リスクや感染対策への不安」と「勤務先の業務負荷や労働条件についての不安(給与補償・人員不足・負担増など)」の2つに大別されます。特に後者に関しては、「人員不足から負担増で離職率が挙がり、さらに人員不足に拍車がかかる……」という悪循環に陥る危険性があります。


そこで、〈ヒント3〉での感染対策に関連づけた強みや魅力の情報発信だけでなく、面接時に応募者が感じるコロナ禍の不安をヒアリングしてみてはいかがでしょうか。どのような不安を感じているのかを把握した上で、ドクター側から可能な範囲での具体的なフォローアップや寄り添う姿勢を伝えることで、応募者との信頼関係の構築が期待できます。


【後編まとめ】応募者とのより良い関係構築で、コロナ禍の採用活動を成功させよう

前編では、採用時のミスマッチを防ぎ早期退職を減らすには、「労働条件などの情報の伝え方にヒント」があることを紹介しました。今回の後編では、コロナ禍で変わった仕事観を踏まえ、求職者の不安やニーズの変化を把握することへの重要性が、調査結果から読み取れました。その上で、求職者の不安やニーズに応える形で、求人に掲載する内容を工夫したり、面接時に一緒に不安に向き合おうとする姿勢を見せたりすることによって、新たに入職したスタッフとドクターとの良好な関係性を築けるのではないでしょうか。

求職者が気にかけていることを解消させて、採用後には貴院を支える人材として長く活躍してもらうために、今回の検証結果やヒントをぜひ求人や選考に生かしてください。(ドクターズ・ファイル編集部)


※ドクターズ・ファイル編集部による「転職に関する調査」。対象は、転職経験のある、または転職経験はないが転職を考えたことのある医療従事者(医師・歯科医師を除く)で、全国主要都市の25歳〜59歳の男女700人。2022年3月17日~22日にインターネット調査にて実施 

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