〈後編〉スタッフのやる気を左右する!クリニックの「人事評価制度」調査レポート

近年、一般企業ではポピュラーになりつつある「人事評価制度」。このような人事制度をうまく活用することで、スタッフの育成、ひいては自院の成長につなげたいと関心を寄せるクリニックもあるようです。

とはいえ、一般企業とは働き方が大きく異なることの多い医療現場。クリニックでは、どのように人事評価制度を実施しているのでしょうか?

そこで、ドクターズ・ファイル編集部では、クリニックでの人事評価制度の導入に関する調査を実施。前編では、導入率が約2割程度と、一般企業と比べるとまだまだ浸透していないという実状をお届けしました。

今回の後編では、に「導入している」と答えたクリニックが、具体的にどのように人事評価制度を運用しているかを深堀り。また、「導入していない」と答えたクリニックについても、何が導入のハードルと感じているかを読み解いていきます。


給与、賞与だけでなく、規模や現場の特性に合わせて評価を反映

まずは、人事評価制度を「導入している」と答えたクリニックに、評価結果をどこに反映しているか聞いてみました。

全体で見ると、「賞与」87.5%、「給与」77.1%と、報酬に反映するケースが多いという結果に。特に歯科だけで見ると、給与よりも賞与に反映しており、19.3ポイント上回りました。

前編でもふれたように、歯科は人事評価制度の評価基準として収益貢献度を求める傾向にあるため、インパクトのある反映として賞与が1位となっているのかもしれません。また一般的に見ても、一時的な賞与と、継続的な給与では、経営者の目線として給与反映にはシビアにならざるを得ないという面があるようです。

加えて、歯科の場合、19.2%のクリニックが「休暇の付与、手当補助など待遇」と回答しており、「その他」3.8%については中身を見てみると、従業員旅行などの福利厚生に反映しているという声が挙がっていました。


半数以上のクリニックが、年に2回のペースで人事評価を行っている

人事評価の実施回数は1年に「2回」が最も多く、約6割のクリニックが該当。一般企業でも、例えば3月決算の会社の場合、上半期4~9月、下半期10~翌年3月というように半年ごとに経営管理をするケースが多く、人事評価対象期間も年2回が一般的。クリニックもその頻度とおおむね変わらないことがわかります。定期的かつ継続的な評価は、「あなたの頑張りを見ている」というメッセージの役割も大きいでしょう。

一方で、2.0%とわずかながら「5回以上」と答えたクリニックもありました。一般的に人事評価にあたっては、評価者に時間や労力といった負担がかかりがちであるにもかかわらず、それでも積極的に実施しているクリニックがあるのは興味深いところです。人事評価の重要性を感じているからこそ、実施頻度が高いのかもしれません。


管理方法の主流はワードやエクセル。専用システムは医科のほうが導入進む

では、人事評価において重要なデータ管理は、どのように行っているのでしょうか?

調査結果を見ると、81.3%と多くのクリニックで「エクセルやワードなどのソフト」を駆使していることがわかりました。これらのソフトは自由度が高い一方で、設定を自分で行う必要があるため、評価者の負担増となり、ひいては、導入へのためらいの要因となっているのかもしれません。

そして、医科と歯科で比べてみると、「専用システム・サービス」の項目では医科が9.1%、歯科が7.7%と、歯科よりも医科のほうが1.4ポイントとわずかに高く、「その他」の項目については歯科よりも医科のほうが10.9ポイント高いという結果に。

「その他」の中身を見てみると「メモ帳」「ノート」「コンサルタントと連携(依頼)」などで、クリニックごとに独自のやり方で管理している姿が浮かび上がってきました。


8割ものクリニックが人事評価に難しさや大変さを感じている

続いて、人事評価をする上で、難しさや大変さを感じているかについて聞いてみました。

実際に人事評価を導入しているクリニックのなんと77.1%が、「とても感じる」「やや感じる」と回答しました。特に「とても感じる」の項目で医科と歯科を比べると、医科が40.9%なのに対し、歯科は57.7%。歯科のほうが、人事評価に対して難しさや大変さを感じている度合いが大きいことがわかります。


専門性が高い医療現場。悩ましいのは評価基準の設定をどうするか

ここでは前の質問で、人事評価に対して難しさや大変さを「とても感じる」「やや感じる」と回答したクリニックに、その理由について聞きました。

過半数が「労力や時間」(59.5%)と「評価基準の設定」(51.4%)に難しさを感じているという結果に。一般企業では、会社全体の基準を設けた上で、職級や役割ごとに評価していますが、クリニックでは人数などの規模感や一人ひとりの専門性から、明確な評価基準の設定が難しかったり、職種や役割ごとに公平な基準を設けづらかったりといったハードルがありそうです。また判断基準の難しさ・複雑さと相まって、評価に時間や労力がかかるという悪循環もあるのではないでしょうか。


必要性を感じていても、評価基準の設定や多忙さが導入のハードルに

最後に、人事評価制度を「導入していない」と回答したクリニックにも何が導入のネックになっているのか、その理由を尋ねました。

結果は「評価軸の設け方に不安」55.6%が理由の過半数を占め、次に「多忙で手が回っていない」41.4%という声が続きました。

また一方で、必要性は感じているものの目標軸の設定の難しさや、時間が取れないなどの理由から「見送っている」という意見も多く見られました。

前の質問で明らかになったように、人事評価を実施しているクリニックが抱える「苦心」と同様に、「評価軸の難しさ」こそが現在、評価制度導入の最大のハードルになっているといえそうです。どのような評価軸を設定すれば良いのかが難しく、労力がかかるため、制度導入を躊躇しているという実状が見えてきます。

しかし、被評価者側からは、納得感のある人事評価が仕事のモチベーションにつながり、患者への高いパフォーマンスに帰結しているという声も挙がっています。働き方改革の影響などから、年々需要が高まる人事評価制度。クリニックでも徐々に必要性が高まっていくと考えられるため、今後の動向に注目です。(ドクターズ・ファイル編集部)


※ドクターズ・ファイル編集部による「クリニックの人事評価制度に関するアンケート調査」。対象は、ドクターズ・ファイルを契約中の全国の医科・歯科クリニック。回答数は210院。2022年4月27日~5月6日にインターネット調査にて実施。 

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