〈第1回〉「マーボー豆腐丼」で働くスタミナをチャージ!スタッフ同士の会話も弾む手作りのまかない《メディメシ探訪》

仕事がハードなメディカルスタッフにとって、おいしい昼食はまさにオアシス。食事を通じてモチベーションが向上し意欲的に働くスタッフの姿は、院内の明るい雰囲気づくりにもつながり、患者にとっても気持ちが良いものです。

そこで本コーナーでは、スタッフのモチベーションを上げるクリニックの社食や賄いを「メディカル飯=メディメシ」、そこに力を入れる医療従事者を「メディメシ人」と名づけて取材。院長の想いや、食事が生む「良い効果」をレポートします。


「同じ釜の飯」を食べることで仲を深め、まとまりのあるチームへ

福利厚生の一環として、「メディメシ」でスタッフの健康を気遣い、やる気を引き出そうと取り組む院長が増えています。受付・事務スタッフ、看護師、非常勤の医師も含め14人が勤める『ALOHA外科クリニック』(東京都品川区)の新谷隆院長も、そんな「メディメシ人」の一人です。

もともと料理が好きで、勤務医時代にも自宅に同僚や関係者を招いて食事を振る舞っていたこともあるという新谷院長。そんな新谷院長がメディメシにこだわり始めたのは、大学時代に所属したラグビー部で「同じ釜の飯」を食べて仲間と絆を深めた経験がきっかけだったそう。

食事中に話して人柄を知ることで、チームにまとまりが生まれて良いパフォーマンスを出せるのは、スポーツも仕事もきっと同じでしょう。病院は縦割りの組織で、職種で人間関係が分かれがちだと感じていたこともあって、勤務医時代にはさまざまな職種の人を呼んで食事会を開いていましたね。開業後もスタッフ同士が仲良くなってくれればと、賄いという形で続けています」

食事を大切に考え、自ら台所に立ち続ける新谷院長(写真左)。現在は2022年2月に入職した事務長の北方耕平さん(写真右)も調理担当に仲間入りし、スタッフにおいしい昼食を振る舞うために奮闘中です。

では、同院ではどんな献立を出しているのでしょうか?


日に何件もある手術のため、かっ込みやすい「丼もの」でスタミナをチャージ

献立は基本的に、月曜は訪問診療で外食、水曜は院長の「こだわりカレー」、金曜は北方さんの「丼もの」のローテーションです。それ以外は各自自由ですが、休憩室の冷凍庫に入った作り置きのカレーやストック食材などを食べてもOK。まるで学生寮の食事のような親切さがあります。

取材したこの日は「丼もの」が出る金曜日。

日帰り手術を中心に診療する同院では、次の手術までの合間に急いで昼食を取る人も多いことから、北方さんのアイデアで「サッとかき込めて、スタミナがつくメニュー」として「丼もの」が採用されたそう。

この日の「丼もの」は、マーボー豆腐丼。白菜やネギ、キノコ類がたっぷり入ったピリ辛汁物も一緒に食べます。マーボー豆腐にはひき肉がごろごろと入っていて、ボリューム満点! 出来合いのたれに加えた花椒と刻みニンニクが隠し味だといい、手間をかけたアレンジに「おいしいものを食べてほしい」と心を尽くす優しさが垣間見えます。

調理を担当した北方さんが、「丼の具は肉をメインにすることが多いので、副菜でしっかりと野菜も取れるよう工夫していて……」と話しているところに、「コンビニ弁当だと栄養が偏りがちだし、お金もかかるので本当に助かっています」と受付スタッフさんが補足し、北方さんが照れ笑いする場面も。

新谷院長も「週に1度北方とスーパーに行き、旬の食材や特売品をチェックします。1食の予算は250円と限られますが、スタッフには独身者も多いのでできる範囲で栄養バランスにも配慮したいんです」とほほ笑みます。


昼食効果で通勤が楽しみに。より一層仕事を頑張れる

おのおのの休憩のタイミングで食べるため、給仕はセルフスタイル。休憩室には卓上コンロが並べられ、いつでも温かい料理が食べられる点もポイントです。お代わりをする人もいるので、量は出勤人数より少し多めに作るのだとか。

取材中に休憩に入った医療事務スタッフさんは「朝は昼食が楽しみで通勤の足取りが軽く、午後はたくさん食べた分もっと頑張ろうという気持ちになるんです」と、器を大盛りにしていました。

休憩がかぶったスタッフは、職種の垣根なく集まって一緒に食事。「おいしいね」の一言から、自然と会話が広がっていきます。

スタッフの間では出勤すると「今日はカレーの日だね」「今日の丼は何かな」などと話すのがあいさつ代わりになっているそうで、昼食という共通の話題がクリニックの和やかな雰囲気をつくっている様子がうかがえます。

勤めてまだ日が浅い受付スタッフさんも、「非番の人が『今日の昼は何だった?』と連絡してくるくらい人間関係が良好。仕事の相談もしやすいです」と笑顔。業務上のやりとりにも良い影響をもたらしているようです。


白米を炊いて休憩室に置くだけでも、スタッフの健康な食生活の一助に

スタッフのためとはいえ、週に何日も手作りの賄いを提供するのは決して簡単ではないはずです。

料理が得意な2人だからこそ可能なのでは? という編集部の問いには「きちんとした料理を作らなくてもいいんです。例えば炊飯器で白米を炊いて、休憩室に置くだけでも十分」と新谷院長。

おかずもふりかけや海苔、冷蔵庫があれば卵など、簡単なものでも喜ばれるでしょうとアドバイスをくれました。

白米さえあれば、スタッフがおかずを持ち寄るようになるなど、そこからコミュニケーションが広がる可能性も。当院でも食事を通して職種や立場にかかわらず会話が増えて、仕事にも生きていると実感しています」

(ドクターズ・ファイル編集部)


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