〈後編〉患者に聞いた!私がかかりつけ医に決めた「推しドクター」4つの条件

健康に関わることだから、「いいドクター」を慎重に選びたいのが患者心理

クリニック・病院選びにおいては、自分や大事な家族の健康に関わることだからこそ、より慎重に、より「自分や家族にとっていいドクター」を選びたいと考えるのが患者心理です。

それでは、患者にとっての「いいドクター」とは一体どんなドクターなのでしょうか?

前編に続き、この後編でも、アンケート調査と併せて、日頃より医療機関を利用している患者とその家族に、ヒアリング調査を実施。「あなたが推す、いいドクターとは?」という質問を通じて、患者がいいと感じるかかりつけ医の条件について考察します。日々の情報発信や、患者がより通いやすくなるクリニック作りのヒントとして、お役立てください。


〈推しドクターの条件3〉対象の症状に必要な検査・治療に対応

前編で、患者にとってのいいドクターには、コミュニケーション力が重要であることがわかりました。とはいえ、もちろんそれだけがすべてとは言えません。このSさんとKさんのように、いいドクターの条件として、「対象の症状に必要な検査・治療に対応しているかどうか」を挙げる患者もいます。

実際、前編で取り上げたドクターズ・ファイルの患者調査(※1)でも、「ドクターのどんなところを重視するか」という質問に対する回答は、「得意とする検査・治療内容」(1位)「診療ポリシーや治療方針」(2位)と、治療に関わる内容が上位にランクインしています。

病気やけがを少しでも早く治してもらうためには、治療に関する情報を第一に知りたいと思うのは必然と言えるでしょう。

その一方で、実はクリニック・病院選びにおいて患者が求める情報は、抱える疾患の重症度や悩みの深さによってかなり異なることがわかっています。こちらは、過去にドクターズ・ファイルが行った、別の患者調査(※2)の結果です。

軽度症状では「近くにあり、すぐに診てもらえるか」、中度症状では「対象の症状に必要な検査・治療に対応しているか」、重度症状では「ドクターが対象の症状に必要な検査・治療を専門としているか」を最重要と考えており、抱える悩みや症状が重症化・慢性化するほど、患者は病気や検査方法、治療についての詳細を欲していることがわかります。

つまり、症状の重さや不安のレベルによって求めている情報の内容が変わるということです。これは2014年の調査結果ですが、今の時代にも共通する普遍的な患者のニーズだと思います。情報発信に際しては、「患者」とひとくくりにせず、さまざまな目的でクリニック・病院を探している一人ひとりの視点を大切にすることも重要と言えるでしょう。


〈推しドクターの条件4〉クリニック全体の心遣いを感じる

最後の条件です。

ここまで、患者の本音を探っていくと、ドクターのコミュニケーション力と得意な検査・治療に対するニーズが高いことがわかりました。その一方で、SさんとYさんによると、いいドクターの条件は「スタッフの対応や設備など、クリニック全体の心遣い」だと言います。

その理由として、どれだけ技術が高く、説明が上手なドクターがいたとしても、スタッフの対応や設備があまり良くなかったら、通うのを躊躇してしまうからだと説明します。そこには、「いいドクターにはいいクリニックにいてほしい」というのが患者の本音があると推察されます。

そして、ドクターズ・ファイルの患者調査(※1)でも、患者が「クリニック全体の心遣い」を重視していることがわかります。

クリニックを訪れる人は、体調不良による精神的なストレスに加え、通院にかかる時間的ストレス、診察時の緊張といった多くの不安を抱えています。それらの不安を解消し、安心するための場としてクリニックに訪れますが、さらにストレスを抱えるような結果になれば、患者としては「ほかを探そうかな……」という心理になってしまうかもしれません。

裏を返せば、クリニック全体に気配りが感じられること、例えば、感染対策の徹底や、待ち時間を減らすための予約システムの導入、キッズスペースの確保、ウォーターサーバーの設置といった居心地の良さを考えた待合室の空間づくり、そしてスタッフの優しい声かけなどが、満足度アップにつながると考えられるのではないでしょうか。

クリニック全体でストレスフリーな場をめざし、「患者とのコミュニケーション」「設備」「待ち時間」など、それぞれのシーンにおいて、まずはできる部分から工夫や努力を続けることが、患者にとっての安心につながり、多くの人のかかりつけ医として定着していくのかもしれません。


【後編まとめ】患者とクリニックのベストマッチングのために

前後編を通じて、いいドクターの4つの条件を紹介しました。

「穏やかな先生がいい」「ずばっと結論を言ってほしい」など、患者の好みはさまざまです。そのため、「どんな治療を得意とするか?」などの技術的な側面はもちろん、「先生はどんな雰囲気の人?」といったドクターに関することが、実は患者はとても気になるところなのです。

それらをしっかり伝えた上で、院内の設備など、クリニック全体の取り組みまでをアピールすると、患者はさらに安心して、かかりつけ医として選びやすくなるでしょう。

クリニックに足を運ぶ前から、ドクターの顔が見えることは、患者にとっては大きな安心材料の一つとなります。ホームページや広告メディアなどでのわかりやすい情報発信によって、患者の安心につなげましょう。(ドクターズ・ファイル編集部)


※1 ドクターズ・ファイル編集部による「患者のクリニック選びに関する調査」。対象は、全国主要都市に住む、もしくは勤務する20~59歳の男女4000人。2020年7月にインターネット調査にて実施。

※2 ドクターズ・ファイル編集部による患者調査。対象は、首都圏在住の年間2回以上通院経験のある男女416人。2014年にインターネット調査にて実施。

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