〈受付編〉「受付も治療の一環」をモットーに美しさや清潔感、安全性を追求《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》

地域に支持されるクリニックには、医療サービス以外にもプラスアルファの強みがあるもの。当コーナーではそんな強みを持つクリニックを取り上げ、魅力づくりのヒントを探ります。今回のテーマは「受付」。神奈川県横浜市にある『つちはら整形外科クリニック』を訪ねました。


医療者の視点と患者の視点で、「理想的な受付」を徹底的に議論

受付から始まり受付で終わるのが、クリニックの診療。それだけにぱっと目に入る光景や、スタッフの対応は、クリニックの印象を左右します。受付の演出や、スタッフの接遇研修に力を入れるクリニックも多いことでしょう。

神奈川県横浜市栄区にある『つちはら整形外科クリニック』の土原豊一院長は、「受付も治療の一環」というのが持論です。痛みに悩む患者が多い整形外科。痛みは患部だけでなく意識や感情からの影響も大きいため、たとえ治療が適切でも、受付の雰囲気や対応が悪く不快な思いをすると、痛みを軽減できないこともあるといいます。

そこで開業前に、土原院長は、妻でマネジャーの土原美紀さんと、受付はどうあるべきかを医療者の視点、患者の視点から徹底的に話し合ったそう。そして「見た目の美しさ」「清潔さや快適性」「安全性の確保」をポイントに、同院の受付を作り上げました。

「診療の中身と同じように、見た目も大切だと思います。きれいで片づいていると、スタッフも患者さんも自然にその状態をキープしてくれるので清潔さや快適性が維持でき、安全性にもつながります」と土原院長。

「受付の装いは全体の印象に影響するので、きれいさにはこだわりました」との美紀さんの言葉どおり、同院の受付は美しく心地良さが感じられます。患者側からはバックヤードが見えないようにする配慮なども行き届き、快適に安心して治療が受けられそうです。


全員が理念を共有して魅力的な受付を作り上げる

「医療はサービスではなくホスピタリティー。『患者さま』ではなく『患者さん』として接する」との考え方を、受付対応に生かしているのも同院の特徴です。

患者には平等に接することを重視し、誰に対しても同じように丁寧な対応や言葉遣いを心がけています。「自分がやってほしいと思う対応」が最高の接遇だという意識を持って、患者に接することが大切。しかし、ある患者を特別扱いして、そのほかの患者と差が出るようなことがあってはならない、というのが土原院長の考えです。

開業から7年を経て、土原院長や美紀さんの思いは受付スタッフにも浸透してきました。めざすところを理解しているため、接遇について特別な指導を行う必要はなく、気づいたことをフィードバックする程度だといいます。

充実した設備や機器のハード面と、個々のスタッフの対応やチームワークといったソフト面。モニターやチャットを利用して各部署の状況をリアルタイムで把握し、デジタル技術を駆使する一方、あえて手書きのヒヤリハットノートを活用しているそう。優雅な雰囲気のカウンターでは、治療を手助けする「整形外科スイーツ」を紹介し、患者が楽しんで治療を継続できるような工夫も。

さまざまな要素が絶妙なバランスで組み合わされ、魅力的な「クリニックの顔」となっている同院の受付。その根底には「患者さんに、来て良かったと思ってもらいたい」という、土原院長と美紀さんの熱い思いが流れています。


『つちはら整形外科クリニック』がこだわっている「受付」6つのポイント

ここからは、同院が受付に関して「こだわっている6つのポイント」をピックアップ。具体的にどのような取り組みをしているのか、見ていきましょう。


〈ポイント1〉カウンターは優雅さを演出しつつ安全性や清潔さを確保

ホテルのような大理石のカウンターは、入り口に対して斜めの角度に配置。待合室に加え、入り口付近や駐車場の様子も確認できます。待合の椅子は1人掛けにすることで、優雅さだけでなく、感染症対策の役割も果たしています。


〈ポイント2〉採用時から理念を共有し、患者への平等な対応を徹底

受付スタッフの採用面接では、同院の理念や考え方を説明し、納得して共感できる人を採用。「患者さま」ではなく「患者さん」として考えることや、特別扱いはせず、どの患者に対しても平等に接することを徹底しています。


〈ポイント3〉エレガントな制服を採用。スタッフの動機づけにも

第一印象を重視して、受付の制服は高級ホテルのコンシェルジュをイメージしたものを選択。「クリニックの顔」としての洗練さや品格の演出に加え、美しく装う楽しみをスタッフたちのモチベーションアップにつなげています。


〈ポイント4〉受付の負担軽減や感染対策に役立つ機器を積極導入

スタッフの受付業務の負担軽減や、患者の待ち時間短縮のために、再来受付機や自動精算機を導入。スタッフと患者の接触機会を削減でき、現金に触る頻度を減らせるため、コロナ禍での感染対策としても役立っています。


〈ポイント5〉ヒヤリハットノートで日々の反省や喜びを共有

受付を中心にスタッフが反省や気づき、患者の言葉などを随時書き込み、院長がコメントをする手書きノートを、全員で回覧して課題や良かった点を共有しています。受付スタッフが他部署の業務理解を深める取り組みも実践しているそう。


〈ポイント6〉多めの人数で丁寧な対応を。受付だけのご褒美も

負担軽減の機器を導入していても、従来どおり受付には常勤4人を配置してこまやかに対応。また成果が見えにくい受付業務の意欲向上のため、レセプト返戻ゼロなど業務がうまくいったときには、受付だけの食事会や差し入れでねぎらうことも。このような取り組みで、院内のチームワークも醸成しています。


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以上、受付に関して「こだわっている6つのポイント」を紹介しました。受付は患者との接点が多い「クリニックの顔」ともいえる存在。クリニックに対する信頼感にも影響するだけに、患者が気持ち良く通えることをめざして受付の環境づくりに力を入れているドクターは少なくないでしょう。

その一方で、スタッフが受付業務へのモチベーションを高めるための工夫も大切なポイントです。「着てみたい」と思わせる制服を採用したり、スタッフの頑張りに報いるような取り組みを導入し成果を実感させたりすることで、患者へのホスピタリティーは一層発揮されます。

『つちはら整形外科クリニック』のように、患者だけでなく一緒に働くスタッフにまで寄り添う姿勢が、受付をより良くしていくための鍵といえるのではないでしょうか。ぜひ貴院ならではの魅力的な受付作りの参考にしてみてください。(ドクターズ・ファイル編集部) 

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